かなしみを分かち合うこと
紫陽花の季節がそろそろ終わりを迎えるころ。
雨の匂いと共に、ゆっくりとカタツムリの歩みも遠のいてゆく。
けれど、雨音は、人のこころの奥にある、
しずかな、ひそやかな哀しみをそっと思い出させるのだ。
新美南吉の『でんでんむしのかなしみ』は、
自らの背にいっぱい詰まった「哀しみ」に気づいた一匹のでんでんむしが、
そのかなしみを分かち合い、
そして、そのかなしみを肯うことを、小さな身に受け止めて行く物語。
生きるということの本質をやさしくひもといてくれるのだ。
調布FMラジオ「神泉薫のことばの扉」2017.10.28放送分アーカイブにてお聴き頂けます。ひそやかな哀しみを感じる夜、ゆっくりと耳を傾けて下さいますように。
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