お釈迦さまは見ている。極楽と地獄、どちらへいく?


 作家、芥川龍之介。


 その存在は、その名を冠した文学賞のニュースで、広く話題に上り、耳にすることが多いと思います。


 作品も、「羅生門」や「トロッコ」など、教科書で触れる機会が多々あります。

 また、「蜘蛛の糸」という短編は、子どもから大人まで楽しめる、ある哲学を持った物語です。


 「蜘蛛の糸」は、龍之介、26歳の時、児童文芸雑誌「赤い鳥」に掲載された、初めて手掛けた児童文学。とても、はじめてとは思えない完成度の高い作品で、ことばを扱う手つきには舌を巻くほどです。


 物語は、極楽にいるお釈迦さまが、地獄をのぞきみるシーンから始まります。

 

 そこには、大泥棒、犍陀多(カンダタ)が、おりますが、この男、過去に一匹の蜘蛛を助けたことがあったことから、お釈迦さまは、この男に救いの手を差し伸べようとするのです。

 

 けれど、自分だけ助かりたい、極楽へ行きたいと思う犍陀多の心が悲しい結末を招きます。

 

 ひとりの人間の中に在る、優しい心やエゴイズムをまっすぐに表しており、仏教の教えが物語の根底に息づいています。


 心の持ち方ひとつで、極楽に行くこともできるし、地獄に落ちることもある。

 

 読み終えた後、そっと自分の心をのぞいてみたくなる物語です。


 龍之介の「蜘蛛の糸」、調布FMラジオ「神泉薫のことばの扉」放送分アーカイブにて聴いてみてくださいね!

 


詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

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