【今夜の絵本✰マイラ・ベリー・ブラウン『ベンジーのもうふ』】


風の冷たさにふるえる夜には

柔らかな毛布にくるまると、ほっとしますね。


今夜は、そんな夜のひとときと
子ども時代のある記憶につながる絵本のご紹介をしましょう。

マイラ・ベリー・ブラウン 文 ドロシー・マリノ 絵 まさきるりこ訳
『ベンジーのもうふ』(あすなろ書房/2010)

ベンジーは、ちいさな男の子。
いつも肌身離さず持っている、大好きな「もうふ」があります。

歯医者や散髪屋、幼稚園の門でお母さんと離れるとき、
ぎゅっと、このもうふをにぎると安心するのです。

自分にとっての一番のお気に入りは、

子ども一人一人異なるものですね。


くまのぬいぐるみやふわふわのタオル、一枚のもうふ。

ボロボロに見えても、子どもにとっては、
とても大切な存在。

心理学の立場からは、愛着を示すぬいぐるみやもうふなどを移行対象と呼び、
母親から離れて自立していく、母からの分離を示す第一歩として、
重要な発達段階のひとつと言われています。

絵本の中のベンジーは、ボロボロのもうふを大切にしながら、

少しずつ成長していきます。


ジャングルジムのてっぺんにのぼったり、
ちょっと大きな靴を履くようになったり、
見えない心の中に、小さな自信と強さを育んでいきます。


「もうじき そのあかちゃんもうふが いらなくなるわよ、ベンジー」


眠る前にキスをして、優しく見守ってくれる母親の、
柔らかなほほえみに、ベンジーは心から安らぎを覚えます。


ベンジーがゆっくりと成長の階段を登り、

自分よりも弱い存在へと優しさを届け、

大切なもうふを手放す瞬間のページには、

思わず笑顔と感動があふれます。


子育てに、ふと迷いを感じた瞬間、

開いてみて頂きたい一冊。


子どもは、子どものペースで、確かに大きくなっていくんだと信じられる、

ほっと安心感を与えてもらえる作品です。


夜のひととき、ぜひ膝元に。



詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

「ことばを贈る 言葉を届ける コトノハの種まきを」 時代と共に「ことば」を耕します。