新しい自由をもとめるとき
詩人・三好達治。ふいに浮かんでくる達治の詩といえば、「雪」という二行の短い詩が思い出されます。
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。
太郎や次郎、しんしんとふる雪、永遠の時間が、屹立した行の中に封じ込まれて、
おだやかに、心の奥に染み入ります。日本的な風景を織り込んだ、抒情豊かな詩です。
一方、『砂の砦』(1946年)に出版された詩集に納められた詩「鴎(かもめ)」は、戦争が終わって、新しい自由を感じ始めたときの高揚する時代の気分が現れており、「雪」のゆったりとしたリズムとは異なり、一転して開放感のある作品となっています。
調布FMラジオ「神泉薫のことばの扉」2018.5.19放送分アーカイブにてぜひ、お聴きください!
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