せかいへ一歩踏み出すために。

 

 新美南吉の童話は、『ごんぎつね』、『手袋を買いに』など、優しくおだやかな語り口の中にも、そのお話の根底には、深く考えさせられるテーマが密やかに流れています。


 「でんでんむし」というお話は、でんでんむしの親子、「母と子」の会話で成り立つ、小さなお話。ことばを、ひとつひとつ覚え、そのたびに、世界を、ひとつひとつ知っていくプロセスを、でんでんむしのお母さんが導き手となって伝えていく、大きな優しさに満ちた物語です。


 はっぱ、あさつゆ、ちょうちょう、そら。

 

 でんでんむしのお母さんは、はっぱやあさつゆの存在を、そっと子に教えていきますが、

「そら」だけは、説明ができません。「そら」の向こうにあるものも。


 生きとし生けるもの、みな、宇宙がどれほど広いのか、その無限の広さを知らないのです。

でも、それでいいのだと肯定する、普遍の広がりが、でんでんむしの親子の会話から、そっと響いてきます。


 調布FMラジオ「神泉薫のことばの扉」2017.7.20放送分アーカイブにて、南吉の童話「でんでんむし」ぜひ聴いてみてください!


詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

「ことばを贈る 言葉を届ける コトノハの種まきを」 時代と共に「ことば」を耕します。