【自分の翼ではばたくこと】


青の表紙、波の音。
ラ・メール“海“のことばがたおやかに響く。
棚沢永子著『現代詩 ラ・メールがあった頃 1983.7.1-1993.4.1』(書肆侃侃房/2023)を読んだ。
40年前に誕生した「女性による女性のための詩誌」
「現代詩ラ・メール」。2人の詩人、新川和江、吉原幸子責任編集による詩誌と10年に渡るその文学運動は、詩の世界に大きな反響を及ぼした。
編集者として携わった著者の軽やかな文体の魅力に惹き込まれて、詩人たちの声、佇まいがリアルに感じられた。
「女の声」というものが、しなやかなたくましさを持って凛と立ち、社会へとことばを響かせていくことの面白さ、その光と影。時に傷つき、倒れそうになりながらも、「女たちの場所」、「女たちのことば」を勇気づけた「ラ・メール」。
私が詩を書き始めた頃に終刊となった「ラ・メール」は、いつも遠いあこがれのように光放つ詩誌だった。
現在、女性の社会的立ち位置や、表現のフィールドは、過去に比べ、大きく広がってはいるものの、未だ古い価値観に触れ得る場面も多い。
終刊号の「ご挨拶」のことばが、心深く届く。
「自分の翼ではばたくこと。明文化して掲げはいたしませんでしたが、それが「現代誌ラ・メール」の一貫した理念でありました。」
この上なく自由に、おおらかに
ことばの大空へと自分の翼ではばたくこと。
女の手が切り拓いた
何枚もの白いページは
今なお鮮やかに輝いている。

詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

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