【~与謝野晶子の章~試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より①】


秋の光に包まれて、試論集『十三人の詩徒』(七月堂)を出版しました。

日本の近・現代詩人13人の詩と人生を見つめた一冊。 

日本語の豊かさ、ことばの光を感じて頂けたらうれしいです。


 本の中から、詩人たちの「ひとひらの姿」をご紹介します。 


▶与謝野晶子(よさの あきこ/1878~1942)


大阪、堺市生まれ。詩人、歌人、思想家として活躍しました。

明治、大正、昭和と、三つの時代にまたがり、

新しい文明が開かれてゆくまぶしい高揚を見つめました。

関東大震災では、源氏物語の訳稿を焼失。

その痛みを超えて、作品たちは書き残されました。


晶子の代表作と言われる作品「山の動く日」。

女性解放運動の出発点としてあげられる雑誌「青鞜」(せいとう)

創刊号の巻頭に載せられた詩は、

みずみずしい力強さに満ちています。


    山の動く日きたる、

 かく云(い)へど、人これを信ぜじ。

 山はしばらく眠りしのみ、

 その昔、彼等(かれら)みな火に燃えて動きしを。

 されど、そは信ぜずともよし、

 人よ、ああ、唯(た)だこれを信ぜよ、

 すべて眠りし女、

 今ぞ目覚(めざ)めて動くなる。

   神保光太郎編『与謝野晶子詩歌集』(1965年・白鳳社)

 (写真:『与謝野晶子詩歌集』(彌生書房/1965))


自由と解放を目指して立ち上がろうとする女たちの声。

新しい時代を切り開く人間像を思わせます。 


私生活では、11人の子育てを経験した晶子。 

彼女の詩のことばは、鋭い五感に開かれた肉体と感性に支えられ、

強いリアリティを宿し、私たちの生を揺さぶります。


晶子の着物の裾は、いつも大地の土に触れながら 

創造世界への飛翔の翼としてひるがえり続けたのです。


 ~次回は、田村隆一をご紹介します~ 


▶試論集『十三人の詩徒』(七月堂)

▶七月堂HP http://www.shichigatsudo.co.jp/




▶与謝野晶子の作品を紹介したラジオアーカイブはこちらから。

ぜひ、聞いてみて下さいね。


詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

「ことばを贈る 言葉を届ける コトノハの種まきを」 時代と共に「ことば」を耕します。