【~田村隆一の章~試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より②】


昨日に続いて、試論集『十三人の詩徒』(七月堂)から。

日本の近・現代詩人13人の詩と人生を見つめた一冊。 

日本語の豊かさ、ことばの光を感じて頂けたらうれしいです。


 本の中から、詩人たちの「ひとひらの姿」をご紹介します。 


▶田村隆一(たむら りゅういち/1923~1998)


東京生まれ。詩人、随筆家、翻訳家として活躍。

詩誌『荒地』に参加。

戦後詩に大きな影響を与えました。


田村の詩の流れを現す大きなキーワードは、

「垂直から水平へ」。

言語の高度な抽象性を柱として、

戦後社会に生きる人間たちの

ざわめきと体温とを母胎として

数々の詩が生まれました。


その作品群は、詩にしか成し遂げることのできない、人と文明と現在とをつなぐ確かな記憶として屹立します。

 

 言葉のない世界は真昼の球体だ

 おれは垂直的人間

 (「言葉のない世界」)


内向きに閉ざされることのない詩のことばには、世界を真摯に見つめる批評性がみなぎります。


幅広く、奥深いことばの源泉と鉱脈とを開拓し続けた田村隆一。

書き残された作品の力は、時間の鑢にかけられても、決して緩むことがありません。


 白という色を産みだすために

 ただそれだけのために

 ぼくは詩を書く


 一行の余白

 その白

 その断崖を飛びこえられるか


 白


  (「二月 白」)


※引用作品は田村隆一『田村隆一全集 全6巻』(2010年・河出書房新社)

 (写真:高梨豊『田村隆一全集』第3巻より)


~次回は、永瀬清子をご紹介します~


▶詩論集『十三人の詩徒』(七月堂)

▶七月堂HP http://www.shichigatsudo.co.jp/


詩人・作家 神泉 薫(Kaoru Shinsen)のブログ ~言の華~

「ことばを贈る 言葉を届ける コトノハの種まきを」 時代と共に「ことば」を耕します。