【~北原白秋の章~試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より⑥】
今日は、秋空が美しいですね。
引き続き、試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より。
日本の近・現代詩人13人の詩と人生を見つめた一冊。
日本語の豊かさ、ことばの光を感じて頂けたらうれしいです。
本の中から、詩人たちの「ひとひらの姿」をご紹介します。
▶北原白秋(きたはら はくしゅう/1885~1942)
福岡の水郷柳川に育つ。
酒造業を営む裕福な家の長男に生まれ、
少年時、柳川語で、トンカ・ジョン(良家の長男)と呼ばれました。
幼少期より、竹取、平家物語、
近代の書物や翻訳書を読んだという早熟な少年は、十四歳にして文学を志します。
上田敏を魂の母、森鴎外を魂の父と呼び、
日本語によって書き得るあらゆるジャンルの表現を泳ぎ渡った白秋。
その偉業の中で最も広く知られることになった童謡制作は、
「詩胎の発素」を見つめ、
詩の本質へ還元していく行為として、
白秋は重要視しました。
揺(ゆり)籠(かご)のうたを、
カナリヤが歌(うた)ふよ。
ねんねこ、ねんねこ、
ねんねこ、よ。
(「揺(ゆり)籠(かご)のうた」)
大正七年、小田原に転居した白秋は、翌年、十字町天神山伝肇寺(でんじょうじ)の境内に住宅を建て、
「木兎(みみづく)の家」と名付け、ここで童謡を含めた多くの作品を生み出しました。
雨(あめ)雨(あめ)、ふれふれ、母(かあ)さんが
蛇(じゃ)の目(め)でおむかひうれしいな。
ピツチピツチ チャツプチャツプ
ランランラン。
(「雨ふり」)
※引用は、北原白秋『白秋全集 全39巻・別巻1巻』(1985~1988・岩波書店)
(写真:『白秋全集』(1985・岩波書店)第18巻、月報13より)
童謡の、幾度くり返しても飽きることのない節回し。
そこには、人間はもちろんのこと、木、草の葉、星のまたたき、 空や山や野原、海のささやき、一粒の芥子の種。
ありとあらゆる生きとし生けるものへの愛が波打ちます。
▶次回は八木重吉をご紹介します。
▶試論集『十三人の詩徒』(七月堂)
▶七月堂HP http://www.shichigatsudo.co.jp/
9月11日より、七月堂古書部で店頭販売が始まりました。
お立ち寄り頂けましたらうれしいです。
新しい読者との出会いを待っています!
▶北原白秋作品をとりあげたラジオアーカイブはこちらから。
ぜひ、聞いてみて下さいね。
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