【~八木重吉の章~試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より⑦】
美しい秋空を見つめると、八木重吉を思い出します。
秋は、重吉が大好きだった季節。
引き続き、試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より。
日本の近・現代詩人13人の詩と人生を見つめた一冊。
日本語の豊かさ、ことばの光を感じて頂けたらうれしいです。
本の中から、詩人たちの「ひとひらの姿」をご紹介します。
▶八木重吉(やぎ じゅうきち/1898~1927)
東京都町田市相原町生まれ。
わずか29年の生涯、生まれた詩は2000篇あまりあります。
詩の題材は、身近な自然と家庭生活、
そして、その中心にキリスト教信仰という
揺るぎない柱がありました。
重吉の詩のことばは、ひらがなの短いフレーズが多く、
素朴なやさしさに満ちています。
虫のささやきや梢のざわめき、
隠された小川のせせらぎのような。
この地球に息づく、慎ましく生きる者たちの、
確かな声が立ち上ってきます。
ほのかにも いろづいてゆく こころ
われながら あいらしいこころよ ながれ ゆくものよ
さあ それならば ゆくがいい 「役立たぬもの」にあくがれて
はてしなく まぼろしを 追ふて かぎりなく
こころときめいて かけりゆけよ
(「心よ」)
むなしさの ふかいそらへ ほがらかにうまれ 涌く 詩(ポエジイ)のこころ 旋律は
水のように ながれ
あらゆるものがそこにをわる ああ しづけさ
(「むなしさの 空」)
※引用は、八木重吉『八木重吉全集 全4巻 別巻1巻』(2000年・筑摩書房)より
(写真:『八木重吉全集』(1982年・筑摩書房)第3巻より)
日本的抒情を根底に生まれた重吉の詩は、
宇宙を生きるあらゆる生命の営みを見つめ、
ただそこに在ることの尊さ、命というものの持つ
瞬間的な温もりと幸福を、かなしみの果てに、描き出そうとしたのです。
▶次回は草野心平をご紹介します。
▶試論集『十三人の詩徒』(七月堂)
9月11日より、七月堂古書部で店頭販売が始まりました。
また、HPよりオンラインでご購入頂けます。
▶七月堂HP『十三人の詩徒』ご紹介&販売ページ
新しい読者との出会いを待っています!
▶八木重吉の作品を紹介したラジオアーカイブはこちらから。
ぜひ、聞いてみて下さいね。
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